AvaSAR

雪崩サーチ&レスキュー

雪崩サーチ&レスキュー(AvaSAR)講習会

国際山岳安全情報機構(MountainSafty.info:スイス)が提供する国際基準の雪崩サーチ&レスキュー技術(AvaSAR)を日本で普及させる講習会です。

雪崩サーチ&レスキュー講習会(AvaSAR)について

【講習会の歴史】 Avalanche Search & Rescue 

 本講習会は、ICAR(国際山岳レスキュー委員会)の委託のもと、雪崩レスキュー技術の国際標準化をおこなっているマニュエル・ゲンシュワイン(Manuel Genswein、スイス)を札幌在住の有志が招聘し、2015年12月に始まりました。(公社)日本雪氷学会北海道支部雪氷災害調査チームでは、ガイドが研究者をサポートし、山岳地帯で発生した雪崩事故調査を行っており、そのガイドが、調査チームの安全性を高めるためにこの講習会に参加しました。

 2016年からは雪崩事故防止研究会・雪氷災害調査チームが主催者となり、ゲンシュワイン氏を招聘して講習会を開催するようになりました。ガイドたちは受講するとともに、インストラクタの育成に力を入れ始めました。ゲンシュワイン氏が教える捜索救助の知識や技術が非常に優れていたことから、対象者を徐々に公的救助機関の救助隊員に拡げ、やがて、チームメンバーの救助技術レベルの向上のためだけではなく、日本における雪崩リスクマネジメント向上のために国際標準の基礎技術を啓発する必要性を認識するようになっていきました。そして、受講対象者を、民間の遭難救助に関わる者たち・公的機関の救助隊員・山岳ガイド・スキーパトロール・一般の雪山愛好者へと拡げてきたのです。

 5年間の活動により、雪氷災害調査チーム所属のガイド、研究者を中心に10名を越えるインストラクタが育成されました。我々は、高校生ら8名が死亡した那須雪崩事故(2017)を契機に、雪崩埋没者の生存救出を図るには雪崩レスキュー技術の教育が不可欠であると再認識しました。2019年3月には、那須町でAvaSAR講習会を開催したのを皮切りに、本州に活動を拡げるようになったのです。今後は、雪氷災害調査チームのガイドと登山家・研究者が講師を務め、プロフェッショナルからアマチュアまでの広い層に雪崩レスキュー技術を教育すること目的として、北海道・東京・栃木・群馬・長野などで講習会を開催していきます。

【AvaSAR講習会の概要】

  • 国際的に標準化された雪崩レスキューの技術の初級者/中級者向けのカリキュラムを用いて技術に習熟した講師により、一般向けの講習会として広く参加者を募り、講習をおこなう。
  • 講習で教える雪崩レスキュー技術は、MountainSafety.info (山岳安全情報機構、以下 MS.i)が提供する「最良の実践を目指す雪崩レスキュー技術」に準拠し、講師はMS.iのインストラクタ講習を受講した雪崩教育に関わってきた研究者、教育者、プロの山岳ガイドで構成される。

注: MountainSafety.info (MS.i、山岳安全情報機構)
 MS.iは、山岳レスキューの国際規格の勧告をするICAR(国際山岳レスキュー委員会)から、さまざまな勧告の技術的裏付け、理論的検証を託され、IFMGA(国際山岳ガイド協会)、SLF(スイス国立雪・雪崩研究所)と連携し、UIAA(国際山岳連合)との協力の下で、先駆的なワーキンググループとして発展してきている。MS.iのプロジェクトはManuel Genswein (マニュエル・ゲンシュワイン)によって2016年に始められ、活動の拠点は、スイス国立雪・雪崩研究所に置かれている。雪崩レスキューを最初の取り組み課題とし、ICARの勧告、UIAAの装備に関する国際規格の発効に貢献している。
 MS.iの雪崩レスキューの様々な技術は、23ヵ国語に翻訳されて提供されている.

http://mountainsafety.info/

【講習会の目的】

  • 国際的に標準化された MountainSafety.info (以下 MS.i)が提供する「最良の実践を 目指す雪崩レスキュー」に準拠した技術を用い、一般向けの講習会として広く参加者 を募り、講習をおこなう
  • 国際基準の雪崩レスキューの技術を日本に普及させ、日本の雪崩レスキュー技術を国 際基準のレベルに引き上げる
  • エビデンスに基づく最良の実践を実現するための雪崩レスキュー技術を理論・実践の 両面において受講生に提供する

【対 象】

  • スキーヤー、スノーボーダー、登山者など雪山愛好者 ○ 公的機関の救助隊員、ガイド、スキーパトロール
  • 医師、看護師など医療従事者

AvaSAR関連記事

【企画趣旨】 (2025-26シーズン)

 雪崩により死亡した北海道大学の学生は 28 名。 雪崩事故防止研究会は北海道大学山スキー部、山岳部、ワンダーフォーゲル部の OB3 名によって 1991 年に設立されました。北海道大学低温科学研究所の研究者、雪山を楽しむスキーヤー、登山者、医師、ガイド、消防士、看護師らが仲間に加わり、雪と雪崩の科学、気象、低体温症、雪崩トランシーバー(ビーコン)を用いた捜索救助法などの啓発・教育活動を北海道で続けています。2018 年から活動を本州へ拡げました。

 活動を本州へ拡げた理由は、高校生ら 8 名が亡くなった那須雪崩事故(2017 年3 月 27 日)が起きたからです。この事故調査に会員が関わりました。雪崩の科学的な知識、雪崩を回避する知識があれば、那須雪崩事故は防げたはずです。雪崩の捜索救助法と低体温症の知識があれば、もっと助かる命があったはずです。私たちは改めて、雪崩事故防止に教育が不可欠だと認識しました。2018 年 3 月に栃木県で講演会と講習会を開催し、2019 年に東京、2020 年に白馬で講演会を開催するようになりました。2024 年 3 月、鳥取県の大山で登山者 2 名が死亡する雪崩事故が起きました。「雪崩は起きない」と思い込む登山者。「まさか雪崩に遭うとは思わなかった」と異口同音に語るスキーヤー。このままでは大山で雪崩事故が激増すると危機感を抱きました。そのため大山の登山、スキーヤー、遭難者救助に奔走する人たちと第1回大山講演会と講習会を開催しました。こうして講演会を全国5会場で開催するようになりました。

 講演会参加数は、 2020 年 1,280 名、 2021 年 1,135 名、 2022 年 960 名、2023 年 1,160 名、2024 年は 980 名でした。昨年減少したのは、東京講演会のオンライン参加を廃止したためです。 いずれの会場も雪崩に関する知識を求める人たちの“熱気”と“真剣さ”が溢れました。雪崩事故防止研究会は、 2025 年も講演会、講習会活動を継続、 雪崩事故を防ぐためにプログラムの改革を進めます。雪山を楽しむ人々が、 「山から生きて還るために」。

雪崩事故防止研究会

622663_449234121781779_300010334_o

雪崩事故を防ぐための科学的知識と最先端の実践的対策を啓発するボランティア団体です。

【問い合わせ先】
代表:阿部 幹雄
E-mail ask@assh1991.net

【事務局】
〒064-0921
札幌市中央区南21条西8丁目 1-37
(株)石田商店内