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雪崩事故防止研究会の最年少会員

 雪崩事故防止研究会の最年少会員は、栃木県大田原市在住の三輪浦淳和さん(20歳)だ。大田原高校山岳部1年生のとき、雪崩事故を体験、仲間8人を失った。淳和さんは、雪崩が発生した瞬間から救助されるまですべてを記憶している。左足の筋肉を断裂、低体温症が進行し、意識がもうろうとなるころ、救助された。掘り出されると猛烈な寒さで体が震え、目の前に生きていると思えない3人が横たわっていた。 「高校を卒業したら、キリマンジャロ(5895㍍、タンザニア)を登りに行こう」と、雪崩で亡くなった二人の先輩と約束をしていた。去年4月、私は相談を受けた。「行きなさい。応援するよ」と答え、高所登山のアドバイスをした。

 テレビ朝日報道ステーションで特集ニュースを制作することになり、ガイドの阿部夕香さんに撮影をお願いすることになった。淳和さんは、トムラウシ山登山のガイドをしてくれた夕香さんをとても信頼していた。

 富士山に2回登って高所に体を慣らし、ミウラ・ドルフィンズの低酸素室でトレーニングを重ね、10月下旬に二人はタンザニアへ旅立った。11月3日、登頂を知らせる電話がキリマンジャロ山頂からかかってきた。淳和さんの弾ける元気な声を聞いた。

 私は、淳和さんと夕香さんを成田空港へ出迎えに行った。とても驚いた。淳和さんが、別人のように変わっていたからだ。表情から、暗さ、苦しさ、陰が消え、“生きている人間の顔”になっていた。 帰国して一ヶ月後、「雪崩事故防止研究会に入らせてください」と淳和さんが言う。「なぜ?」、「キリマンジャロに登ったら、あべさんに言うつもりでした。雪崩のことを勉強したい。雪崩事故を防ぐための活動をやりたい。雪崩事故防止研究会に入りたいのです」。こうして最年少会員が誕生した。

 会員として最初の仕事は、先月北大で開催した講演会でのIT技術者のアシスタントだった。2番目の仕事として、宇都宮講演会の開会挨拶をお願いした。淳和さんは何をはなすのだろうかと楽しみだ。 憧れのトムラウシ山に登頂したとき、「これからどんな登山をしたいのですか?」と質問した。

「攻める勇気も引く勇気もどちらも持って、行った仲間全員が笑顔で帰って来られるような登山をしたい。それが自分にとって恥じない登山です」

 私は答えに納得した。

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