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生きている人間の顔になった少年

  那須雪崩事故(2017年3月27日)で全身埋没、2時間後に救出された三輪浦淳和さん(当時大田原高校山岳部1年)。部員7名と顧問教員1名、8名が亡くなった。淳和さんは低体温症になり、左足の大腿筋を断裂。体の傷は癒えたが、心の傷はとほうもなく重く、心の苦しみが顔に鮮明に現れていた。
 2018年夏、淳和さんが憧れていたトムラウシ山をいっしょに登った。雪崩に襲われ埋まった記憶が甦り、眠れなくて苦しんでいる姿を目の当たりにした。16歳で死の恐怖を体験し、救助されたら雪の上に横たえられている仲間たちの死体を見る。幾人もが発見されず先生たちが探している。
事故から半年後に初めて会ったとき、淳和さんは生きている人間の顔をしていなかった。
 淳和さんが登山を続けたいと言うので、これからどんな登山をしたいのかと山頂で問うた。
「みんなが笑顔で街に帰って来られる登山をしたい」
 つまり、「山から生きて還る登山」だ。
 亡くなった二人の先輩と高校を卒業したら、キリマンジャロを登ろうと約束をしていた。2019年11月、先輩の遺品と8名の遺影を持ち、キリマンジャロに登頂した。成田空港で出迎えると淳和さんが、明るく生き生きとして“生きている人間の顔”に変わっていた。
 キリマンジャロに登頂したら、雪崩事故防止研究会に入会すると決めていた淳和さん。那須雪崩事故の現場を望む茶臼岳(那須岳)山麓で開催したAvSAR講習会にスタッフとして参加した。受講者の中に那須山岳救助隊の増淵篤史さん、植木孝さんがいる。彼らは那須雪崩事故のとき、捜索救助を行っている。その体験から、捜索救助の技量を向上させたいと非常に熱心に活動を続けている。助けた者と助けられた者、3人の顔を見てると私は感無量になった。
 淳和さんはいま、青春を生きている。

雪が無い、雨は土砂降り 那須AvSAR講習会

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